山とともに生きる。相続した山林を「守るだけの土地」から「楽しめる場所」へ
山林の管理というと、どうしても「草を刈る」「木を切る」「倒木を片付ける」といった作業のイメージが強くなります。
もちろん、それも大切な仕事です。
人が入らなくなれば道は草に覆われ、木は伸び、数年もすれば以前とはまったく違う景色になります。
でも、私たちは山林に関わる中で、もう一つ大切にしたいことがあります。
それは、
「せっかく持っている山を、もっと楽しんでもいいのではないか」
ということです。
今回の写真は、山のそばで仲間と過ごした夜の一枚です。
周囲には山があり、少し離れれば街灯も少ない。
昼間とはまったく違う静けさの中で、火を囲み、食事をしながら話をする。
都会のBBQ場のような立派な設備があるわけではありません。
でも、不思議なくらい落ち着きます。
山の中で仕事をしていると大変なことも多いのですが、こういう時間を過ごすと、
「山がある暮らしも悪くないな」
と思います。
山林は「持っているだけ」だともったいない
相続で山林を取得された方から、
「山なんて持っていても何にも使えないですよね」
と言われることがあります。
確かに、山林は土地を持っているだけで毎月収入が入ってくるような資産ではありません。
住宅地のように簡単に家を建てられるわけでもありませんし、道路や地形によっては利用方法も限られます。
そのため、
「固定資産税だけ払って、そのままにしている」
という方も多いと思います。
でも実際に山へ入ってみると、少し見方が変わります。
木があります。
風があります。
虫の声があります。
季節によって景色も変わります。
夏には青々としていた場所が、秋になると色付き、冬には木々の間から今まで見えなかった景色が見えることもあります。
こうした環境をすべて「管理しなければならない負担」と考えてしまうと、山を持つことは大変なことばかりになってしまいます。
反対に、
「この環境をどう楽しめるだろう」
と考えてみると、少し違った可能性が見えてきます。
木を切ることも、山を守ることの一つです
山林というと、
「木はできるだけ切らない方が自然に優しい」
という印象を持つ方もいるかもしれません。
しかし、すべての山をただ放置しておけば良いというわけではありません。
木が密集しすぎると林の中まで光が入りづらくなることがあります。
道路側へ伸びた枝や、建物に近づきすぎた木、倒れる危険のある木など、管理上どうしても伐採した方が良いものもあります。
そこで出てくるのが、間伐した木や枝です。
以前なら、
「切った後、どうしようか」
と考えていたものでも、使い方を少し変えれば資源になります。
十分に乾燥させた木を薪として使う。
薪ストーブに使う。
キャンプやBBQの焚き火に利用する。
丸太の形を残して椅子や台にする。
ウッドチップとして使う。
もちろん樹種や乾燥状態、利用場所、安全面などを考える必要はあります。
それでも、山から出た木を単純な「処分するもの」として見るのではなく、
山の中で再び使う。
これは、とても自然な循環だと思います。
自分たちで山を整備して、そのとき出た木を乾燥させ、後日その薪で火を起こして料理をする。
それだけのことなのですが、実際にやってみるとなかなか楽しいものです。
ホームセンターで買ってきた炭だけでBBQをするのとは、少し気分が違います。
「あの辺を整備したときの木だな」
なんて話をしながら火を見る。
山を所有しているからこそできる、小さな楽しみです。
夜の山には、昼とは違う時間があります
昼間の山は、どちらかというと仕事の場所です。
草刈機の音がする。
チェーンソーの音がする。
重機が動く。
汗をかきながら枝を運ぶ。
夏なら、本当に暑いです。
「今日はもう十分だな……」
と思う日もあります。
ところが日が暮れると、同じ場所とは思えないほど雰囲気が変わります。
作業の音がなくなり、聞こえてくるのは虫や風の音。
少し離れた場所にある家の明かりが見える。
山の木々は黒い大きな影になります。
今回の写真も、昼間だけ見れば単なる山の近くの土地です。
でも夜になり、照明を付け、椅子を並べ、食事を始めると、そこが一つの居場所になります。
高級なキャンプ場でなくてもいいんです。
豪華な設備がなくてもいい。
少し平らな場所があって、安全に火を扱える環境を整えて、仲間と食事ができる。
それだけで十分楽しめます。
私はこういう時間も、山林を所有する一つの価値なのではないかと思っています。
山は「管理する対象」から「過ごす場所」に変わる
面白いもので、山へ行く理由が「草刈りしかない」と、だんだん行くのが面倒になります。
次の休みは草刈り。
その次は枝切り。
また草が伸びた。
こうなると、山=仕事になってしまいます。
でも、
「作業が終わったらBBQをしよう」
「今日は子どもを連れて行こう」
「少し薪を作っておこう」
「秋になったらここでコーヒーを飲もう」
そんな目的が一つ加わるだけで、山との付き合い方はかなり変わります。
人が行くようになれば、自然と土地の状態にも気付きます。
「この木、前より傾いているな」
「ここに水が流れた跡がある」
「知らないゴミが落ちている」
「道の草が増えてきた」
わざわざ年に一度の点検として見に行かなくても、普段使っていれば変化に気付きやすくなります。
これは結果として、山林の管理にもつながります。
つまり、
山を楽しむことと、山を管理することは、意外と相性がいい。
私たちはそう感じています。
全部を開発しなくても、山林活用はできます
「山林活用」という言葉を聞くと、大規模なことを想像するかもしれません。
キャンプ場を作る。
建物を建てる。
観光施設にする。
太陽光発電を設置する。
もちろん、そのような活用もあります。
ただ、すべての山林でそこまでやる必要はないと思っています。
山の入口付近だけ少し整備する。
車を数台停められる場所を確保する。
草を刈って、人が座れる場所を作る。
薪を置く場所を作る。
簡単なテーブルを置く。
たったそれだけでも、今まで「持っているだけだった山」が、自分たちが過ごせる場所になります。
家族だけで使う場所でもいい。
友人を呼んでもいい。
仕事仲間とのBBQでもいい。
山林活用というのは、必ずしも事業にしてお金を生み出すことだけではありません。
所有している人が、その土地から価値を受け取れるようにすること。
それも立派な活用だと思います。
山の木で火を起こし、山を眺めながら食事をする
考えてみれば、とても単純な話です。
山に木がある。
管理のために一部を切る。
その木を乾燥させる。
薪にする。
その薪で火を起こす。
料理をする。
山を眺めながら食べる。
昔なら当たり前だったようなことかもしれません。
でも現在の生活では、こういう体験は意外と少なくなっています。
スイッチを押せば照明が付き、ガスコンロをひねれば火が付き、スーパーへ行けば食べ物が並んでいます。
それはとても便利です。
私たちも毎日その便利な生活の中で暮らしています。
だからこそ、たまに山で火を起こして食事をすると、普段とは違う感覚があります。
薪がなかなか燃えなかったり。
煙の向きが変わったり。
外で食べるだけなのに、妙においしかったり。
予定どおりにならないことも含めて、楽しいんですよね。
写真を撮ったこの夜も、特別なことをしているわけではありません。
でも、山を背景に火を囲みながらみんなで過ごしていると、
「こういう土地の使い方もいいな」
と改めて感じました。
子どもたちにとっても、山は面白い場所になります
山林を次の世代へ残すことを考えたとき、登記簿だけ渡しても、なかなか愛着は生まれません。
「○○番地の山林を相続したから」
と言われても、本人からすれば困ってしまうでしょう。
でも、
子どもの頃にBBQをした山。
おじいちゃんと木を切った山。
家族で焚き火をした山。
虫を捕まえた山。
雪が降った日に遊んだ山。
そういう思い出がある土地なら、話は少し違います。
土地の価値は、お金だけで決まるものではないと思います。
もちろん、維持費や税金、将来の管理は現実的に考えなければなりません。
それでも、
「この山、昔みんなでよく遊びに行ったな」
という記憶は、登記簿には載らない価値です。
相続した土地を次へつなぐなら、そういう関わり方があってもいいのではないでしょうか。
自然を残しながら、人が使える山にする
山林活用というと、木を全部切って土地を平らにすることだと思われることがあります。
私たちは、必ずしもそれが一番いいとは思っていません。
木があるから涼しい。
木があるから景色がいい。
木があるから山らしい。
自然を全部なくしてしまったら、その土地が持っていた魅力までなくなってしまうことがあります。
だから、
残すところは残す。
切るところは切る。
人が歩くところだけ整える。
危険な木は処理する。
景色を楽しみたい場所だけ少し開ける。
こうした形でもいいと思います。
山を完全に自然のまま放置するのでもなく、すべて人工的な土地に変えるのでもない。
自然と人間がちょうどいい距離で付き合える場所を作る。
そんな山林活用が、これからもっと増えてもいいのではないでしょうか。
「負の遺産」ではなく、付き合い方を考える
山林を相続すると、
「こんな土地をもらっても困る」
と思うこともあると思います。
実際、道路がない山や急斜面など、利用が難しい土地もあります。
管理費がかかる場所もあります。
すべての山林が活用できるとは言えません。
それでも、最初から「負の遺産」と決めてしまう前に、一度その土地を見てみてほしいと思っています。
歩いてみる。
木を見てみる。
景色を見る。
上空からドローンで見てみる。
少し草を刈ってみる。
そして、
「この山だったら何ができるだろう」
と考えてみる。
大掛かりなことでなくていいんです。
一坪でも人が座れる場所ができれば、そこはもう「使える山」になります。
山とともに生きる、ということ
私たちは仕事として山林に関わっています。
でも山を、ただ管理する対象だけにはしたくありません。
草を刈る。
木を切る。
道を直す。
ゴミを片付ける。
そうやって山を守ることも大切です。
その一方で、
火を囲む。
食事をする。
家族や仲間と話す。
季節を感じる。
山から出た木を使う。
そういう時間も大切にしたいと思っています。
山を整備した後、少し疲れながら椅子に座って、火を見ながら食事をする。
目の前には自分たちが手を入れた土地があり、その後ろには山がある。
そんな時間を過ごしていると、
「山林を持つというのも、悪いことばかりじゃないな」
と思えます。
山とともに生きる。
山を守りながら、山を使う。
そして、山を楽しむ。
栃木山林相続地管理センターでは、山林を単純に「草を刈って維持する土地」としてではなく、その土地に合った付き合い方や活用方法も一緒に考えていきたいと思っています。
山林には、一つとして同じ土地はありません。
だからこそ、その山に合った楽しみ方もきっとあります。
相続した山を、ずっと遠くから眺めているだけではなく。
たまにはその中へ入って、椅子を置いて、火を囲んでみる。
そこから新しい山との付き合い方が始まるかもしれません。
栃木山林相続地管理センター
住所:栃木県日光市川室862-3
電話番号:050-6869-3646
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