写真を見た瞬間、
「これは通れないな……」
と思いました。
山側から大きな木が倒れ、道路をほぼ完全にふさいでいます。
枝葉も道路いっぱいに広がり、普通車はもちろん、状況によっては歩いて通るのも危険そうです。
山林の中で倒木を見ることはあります。
自然の山ですから、木が枯れたり、風で折れたり、最終的には倒れること自体は珍しいことではありません。
ただ、今回の写真のように道路へ倒れた木を見ると、意味が大きく変わります。
山の奥で一本の木が倒れているだけなら、すぐに何か影響が出ないこともあります。
でも道路をふさいでしまえば、
車が通れない。
住民が帰れない。
山の奥へ入れない。
作業車両も通れない。
場合によっては緊急車両の通行にも影響する。
山林の中だけで完結していたはずの問題が、一気に外へ出てきます。
相続した山林を考えるとき、どうしても「山の中をどう管理するか」という視点になりがちですが、実は道路との境目にある木ほど注意して見ておきたいと感じます。
山の木は、境界線を見て倒れてくれるわけではありません
当たり前の話ですが、木は土地の境界を知りません。
「ここから先は道路だから、そちらには倒れないようにしよう」
なんてことは当然ありません。
山側の斜面に生えていた木でも、傾きや風向き、地形によっては道路側へ倒れます。
しかも大木になれば、根元から道路まで少し距離があっても十分届くことがあります。
普段、道路を走っていると、
「山の木がかなり近いな」
と思う場所があります。
晴れている日は、むしろ緑がきれいです。
木陰になって涼しく、山らしい良い景色にも見えます。
でも台風や大雨のあとには、その同じ木がリスクになることがあります。
山林管理では、木が生えていること自体を問題にするのではなく、
倒れたとき、どこへ届くのか
を見ることが大切だと思います。
なぜ、こんな大きな木が倒れるのか
写真を見ると、かなり大きな木です。
「こんな太い木でも倒れるのか」
と思う方もいるかもしれません。
倒木の原因は一つではありません。
強風。
長時間の雨。
地盤の緩み。
木の老朽化。
根の傷み。
幹の腐朽。
斜面の状態。
周囲の木との関係。
いろいろな条件が重なります。
特に台風では、雨と風が同時に来ます。
大雨で土が多くの水を含んだところへ、強風で木が揺さぶられる。
普段なら耐えていた木でも、条件が重なれば倒れることがあります。
反対に、同じ場所に立っている隣の木は何ともないこともあります。
だから、
「去年の台風でも倒れなかったから大丈夫」
とは言い切れません。
木も毎年少しずつ変化しています。
人間と同じで、去年と今年では状態が違います。
道路沿いの木は、山の奥の木とは少し分けて考えたい
私たちは山林を全部きれいにする必要はないと考えています。
山の奥で安全上問題のない倒木なら、自然に朽ちていくのを待つ場所があってもいいと思います。
すべての枯れ木を切る必要もありません。
自然の森林には、倒木も枯れ木もあります。
でも道路沿いだけは、少し考え方を変えた方がいいと思っています。
例えば、
道路方向へ大きく傾いている木。
根元の土が流れている木。
幹に大きな傷みが見える木。
すでに一部が枯れている木。
他の木にもたれかかっている木。
太い枝が道路側へ張り出している木。
こういったものは、山の奥にある場合と道路沿いにある場合とで、倒れたときの影響が違います。
全部伐採するという話ではありません。
ただ、
「この木が倒れたらどうなるだろう」
と一度考えてみるだけでも違います。
「道路から見えているから大丈夫」とは限らない
道路沿いの木なら、車で通りながら見られるので安心しやすいのですが、木の状態は道路側からだけでは分かりません。
山側の根元が削れているかもしれません。
斜面側で土が崩れているかもしれません。
反対側の幹に大きな傷があるかもしれません。
ツルや周囲の木に隠れて、傾きが分かりにくいこともあります。
今回のように倒れたあとなら一目で分かりますが、倒れる前の小さな変化は意外と見えにくいものです。
山林管理では、この「倒れる前」をどこまで見つけられるかが難しいところです。
もちろん、すべての倒木を予測できるわけではありません。
自然相手なので、絶対はありません。
でも、明らかに危険度が高そうな木を早めに見つけることはできます。
大雨のあとには、木だけでなく斜面も見たい
この写真で気になるのは木だけではありません。
道路のすぐ横が山の斜面になっています。
大雨が降ると、この斜面にも大量の水が入ります。
土が緩む。
表面の土が流れる。
小石が落ちる。
木の根元が露出する。
排水の流れが変わる。
こうしたことが起こる可能性があります。
木が健康でも、根を支えていた地盤そのものが弱くなれば倒木につながることがあります。
ですから台風や大雨のあとに道路沿いの山林を見るなら、
「木が倒れていないか」
だけではなく、
「木の根元や斜面が変わっていないか」
も合わせて見たいところです。
山と水は切り離せません。
以前ブログで紹介した大雨後の濁流もそうですが、水は山の中の状況を一気に変える力があります。
一度道路をふさぐと、山林管理そのものができなくなることもあります
道路へ倒木が出ることで困るのは、一般の通行だけではありません。
その道路が自分の山林へ入るためのルートだった場合、管理にも影響します。
山へ確認に行こう。
でも道路がふさがれている。
倒木処理のために重機を入れたい。
でも重機が現場まで行けない。
さらに奥にも倒木がある。
こうなると、一番手前の問題から順番に処理していかなければなりません。
山林ではアクセスがとても重要です。
土地を所有していても、そこへ行けなければ何もできません。
だから私たちは、
山そのものだけでなく「山まで行ける状態」を維持することも山林管理
だと考えています。
倒木を見つけても、無理に自分で切らない
写真のような木を見ると、
「チェーンソーがあれば切れそう」
と思う方もいるかもしれません。
でも、大きな倒木は注意が必要です。
木には重さがあります。
さらに倒れた状態では、幹がたわみ、強い力がかかっていることがあります。
切った瞬間に動く。
跳ねる。
転がる。
上に乗っていた枝が落ちる。
見た目からは予想しづらい動きをする場合があります。
特に斜面で倒れた木や、他の木と絡んでいるものは複雑です。
道路を早く開けたい気持ちはあっても、危険な状態で無理に作業するのは避けた方がいいです。
台風直後なら、周囲に別の倒れそうな木が残っている可能性もあります。
一本だけに集中していると、頭上の危険を見落とします。
山林では、
「切る技術」以上に「危険な状態を見分けること」
が大切だと感じます。
夜だったら、さらに怖い
この写真を見て、もう一つ思うことがあります。
これが昼間だから木が見えています。
もし夜だったら。
雨が降っていたら。
霧が出ていたら。
カーブを曲がった直後だったら。
車で走っていて突然この倒木が現れたら、かなり危険です。
山間部では街灯が少ない道路もあります。
木そのものが暗いので、夜は道路と重なって見えにくいこともあります。
だから道路沿いの倒木というのは、
「通れなくなる」
だけではなく、発生する場所や時間によっては交通上の危険にもなります。
所有している山林が道路に接している場合、
山奥しか持っていない土地とは少し違う意識で見ておいた方がいいと思います。
相続した山では「道路との接点」を一度確認しておく
相続した山林について、最初に山の全部を歩く必要はありません。
広い山では現実的ではありません。
それよりも最初に、
どこから入るのか。
どの道路に接しているのか。
道路沿いに大木があるか。
急斜面があるか。
水が集まりやすい場所はないか。
こうした「外部との接点」を確認する方が優先度は高いと思います。
山の奥は自然のままでも、周囲の生活へ影響する場所だけは管理する。
これは費用を抑えながら山林を維持する方法としても合理的です。
山林管理は、全部を同じ密度で管理する必要はありません。
危険が大きい場所から優先順位を付ける。
それで十分です。
台風前にできることもあります
台風が来てからできることには限界があります。
強風の中で山へ入り、木を切るわけにはいきません。
だから、普段の状態を知っておくことに意味があります。
道路沿いを見て、
「あの木は道路側へかなり傾いているな」
「これは一部枯れているな」
「根元が最近見えるようになったな」
という木があれば、天候が安定している時期に確認できます。
危険性が高いと判断されれば、台風が来る前に対処するという選択肢もあります。
もちろん、健康な大木を何でも切ればいいわけではありません。
木を残せるなら、それに越したことはありません。
大切なのは、
切るか残すかを、倒れてからではなく立っているうちに考えられること
です。
写真を残しておくと、木の変化も分かりやすい
山林管理では、写真がかなり役に立ちます。
特に道路沿いは同じ場所から撮りやすいです。
春。
夏。
台風前。
台風後。
翌年。
同じ場所を撮っておくと、
木の傾き。
枝の量。
斜面の変化。
道路側への張り出し。
などを比較できます。
「この木、前からこんなに傾いていたかな?」
と思ったときも、過去の写真を見れば確認できます。
相続した山林では、最初の写真が基準になります。
それまでの状態を知らなくても、今日から記録を始めればいいんです。
山林管理は「山の中」だけを管理する仕事ではない
今回の写真を見ると、このことを強く感じます。
木が立っていた場所は山です。
でも木が倒れた先は道路です。
自然の中で起きたことが、人の生活圏へ一気に出てきています。
山林は周囲とつながっています。
道路。
住宅。
川。
水路。
農地。
電線。
そして隣の山。
だから山林を管理するときも、自分の土地の中だけを見ればいいわけではありません。
「この木が倒れたらどちらへ行くのか」
「ここの水はどこへ流れるのか」
「この道がふさがったら誰が困るのか」
少し周囲まで含めて考える。
それだけで、優先して管理すべき場所が見えてきます。
山を全部管理するのではなく、事故につながりやすい場所から
相続した山林を見て、
「こんな広い山、とても管理できない」
と思う方もいると思います。
その感覚は当然です。
山林を住宅の庭と同じように管理しようとすれば、とても現実的ではありません。
私たちも全部をきれいにする必要はないと考えています。
自然のままでいい山は、そのままでいい。
倒木があっても問題のない場所なら、そのまま朽ちていけばいい。
その代わり、
道路沿い。
住宅沿い。
林道。
水路。
入口。
電線周辺。
人が通る場所。
こういった場所を優先して見る。
それだけでも山林管理として大きな意味があります。
「何も起きなかった」が一番いい
山林管理は、何か大きな工事をしたときだけ成果が見える仕事ではありません。
危険そうな枝を一本切った。
排水を一か所掃除した。
道路沿いの木を確認した。
台風後に山を見に行った。
写真を残した。
一つ一つは地味です。
それで何年間も何も起きなければ、
「結局やらなくても同じだったのでは?」
と思うかもしれません。
でも、本当はその**「何も起きなかった」状態を続けることこそ管理**なのかもしれません。
今回の写真のように、一本の木が道路を完全にふさぐほど自然の力は大きいです。
自然を止めることはできません。
木が絶対に倒れないようにすることもできません。
それでも、
危険な場所を知る。
変化を記録する。
道路沿いを確認する。
大雨や台風のあとに状態を見る。
必要な場所だけ手を入れる。
こうしたことはできます。
栃木山林相続地管理センターでは、山林を何でも伐採してきれいにするのではなく、その土地に応じて**「どこを管理すれば周囲も含めて安全に維持しやすいか」**を考えることを大切にしています。
相続した山林が道路に接している方は、山の奥を見る前に、一度道路沿いをゆっくり見てみるのもいいと思います。
何も問題が見つからなければ、それが一番です。
でも、
「この木は少し気になるな」
と感じるものが一本見つかれば、その気付きが将来の大きな倒木を考えるきっかけになるかもしれません。
山の木は、普段は静かに立っています。
だからこそ、倒れてから初めてその大きさに驚きます。
道路をふさいでからではなく、立っているうちに見る。
道路沿いの山林では、その視点を大切にしていきたいと思っています。
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