山の中を歩いていると、ときどき、
「これは何だろう?」
と思うものに出会います。
今回の写真もその一つです。
杉や雑木が立ち並ぶ山林の中に、コンクリートで造られた細長い構造物が残っています。
写真だけでは、この構造物が何の目的で造られたものなのかまでは断定できません。
昔の水路なのか。
山の水を流すための設備なのか。
農業や林業に関係していたものなのか。
現在は使われていないように見えても、昔はこの山にとって大切な役割を持っていたのかもしれません。
こういうものを見ると、個人的には少しワクワクします。
山林の仕事をしていると、単に「木が生えている土地」を見ているだけではなく、その土地が昔どのように使われていたのか、その痕跡に出会うことがあるからです。
ただし、相続した山林の管理という目線で考えると、
「昔のものが残っていて面白いですね」
だけで終わらせるわけにもいきません。
古い水路や構造物があるということは、そこには何らかの理由があるからです。
そして特に山林の場合、水の流れを知ることはとても重要です。
山林を相続しても、中に何があるのか分からないことがあります
相続した山林について、
「どんな土地ですか?」
と聞かれて、すぐ詳しく説明できる方ばかりではありません。
むしろ、
「親から相続しただけなので、よく分からない」
「昔一度行ったことはあるけれど、場所をほとんど覚えていない」
「固定資産税の書類で山を持っていることは知っている」
という方も珍しくありません。
これ自体は何もおかしいことではありません。
何十年も前に祖父母が所有していた山なら、その後の世代が詳しく知らないのも当然です。
しかし実際に山へ入ってみると、
昔の道。
石積み。
水路。
小屋の跡。
井戸のようなもの。
境界付近の古い杭。
今回の写真のようなコンクリート構造物。
いろいろなものが残っていることがあります。
登記簿を見ても、こうしたものまでは書いてありません。
公図を見ても分かりません。
航空写真でも、木に覆われていれば見えません。
実際に現地へ入って初めて分かるものが、山にはたくさんあります。
なぜ山の中にこんな構造物があるのか
昔の山林は、今よりも人との距離が近かった場所がたくさんあります。
林業。
農業。
炭焼き。
薪の採取。
水の利用。
生活のための道。
現在ではほとんど人が入らない山でも、昔は日常的に人が歩いていた場所かもしれません。
そのため、山の中に人工物が残っていること自体はそれほど不思議ではありません。
特に水に関係する設備は、山の中で見つかることがあります。
山に降った雨は斜面を流れます。
湧き水もあります。
沢もあります。
そしてその水を、
農地へ流す。
別の方向へ逃がす。
道路を守る。
生活用水として使う。
さまざまな目的で人が水の流れを変えてきた可能性があります。
今は草木に覆われていても、当時はきちんと管理され、定期的に掃除されていたのかもしれません。
何十年か経って人が入らなくなり、役割も分からなくなった。
山林では、そういうことがあります。
山の管理で「水」を軽く考えない方がいい理由
これまでのブログでも大雨について触れましたが、山林管理で私たちがかなり気にしているものの一つが水です。
晴れている日に山へ入ると、水というものをあまり意識しない場合があります。
地面は乾いている。
沢にもほとんど水がない。
斜面も普通に見える。
でも、大雨が降ると一気に状況が変わります。
山の上に降った雨が集まり、低い場所へ流れてきます。
普段ほとんど水のない場所が川のようになることもあります。
そのため、山林に古い水路や排水設備らしきものが残っている場合、
「もう使っていないから関係ない」
とすぐ決めるのではなく、
なぜここに造られたのだろう
と考えてみることが大切です。
もしかしたら、そこは昔から水が集まりやすい場所だったのかもしれません。
古い水路が詰まっていると、水の流れが変わる可能性があります
山の水路や排水設備は、人が管理しなくなると少しずつ状態が変わります。
落ち葉が入る。
枝が落ちる。
土砂がたまる。
苔が生える。
木の根が伸びる。
そして水が流れにくくなります。
問題は、水がなくなるわけではないということです。
本来流れるはずだった場所が詰まれば、水は別の場所へ流れます。
すると、
道路へ流れる。
斜面を削る。
低い土地へ集まる。
法面へ回る。
といったことが起こる可能性があります。
もちろん、写真の構造物が実際に現在も排水設備として機能しているかどうかは現地で詳しく確認しなければ分かりません。
ただ、山の中でこうした人工物を見つけたら、
「何のためにあるのか」
だけでなく、
「今、水はどこを流れているのか」
も一緒に見ておくと、その土地がかなり理解しやすくなります。
倒木や枝も、水の通り道をふさぎます
今回の写真を見ると、山の中には倒れた細い木や枝もあります。
これ自体は自然の山では普通の光景です。
山のすべての倒木を片付ける必要なんてありません。
むしろ倒木も森林の一部です。
ただし、水の流れや道路に関係する場所だけは別です。
沢。
側溝。
水路。
暗渠の入口。
林道の横。
こうしたところへ木や枝が集中すると、大雨の際に流れを妨げる場合があります。
そこへ落ち葉や土が引っかかり、さらに詰まりやすくなる。
山林の場合、
「一本の枝が落ちている」
というだけでは大きな問題ではなくても、それが水の通り道にあるかどうかで意味が変わります。
山の管理では、物そのものだけではなく、場所との関係を見ることが重要です。
古い構造物は、むやみに壊さない方がいい場合もあります
相続した山で古いコンクリート構造物を見つけると、
「もう使っていないなら撤去してしまおう」
と思うこともあるでしょう。
でも、正体が分からない段階で壊すのはおすすめしません。
昔の水路かもしれません。
隣地へ続いている設備かもしれません。
現在も水が通っているかもしれません。
何らかの権利関係や管理主体が存在する可能性もあります。
また、構造物そのものを撤去することで、今まで保たれていた水の流れが変わることも考えられます。
だからまず、
どこから来ているのか。
どこへ続いているのか。
水が流れているのか。
周囲の地形はどうなっているのか。
を確認する。
分からなければ、昔から土地を知っている方に聞いてみるのも有効です。
こういうとき、ご近所の方の話がとても参考になることがあります。
「あれは昔、田んぼへ水を引いていたんだよ」
なんて一言で、長年の謎が解けることもあります。
地域の記憶というのは、地図には載っていない貴重な情報です。
相続した山では「昔の地形」を想像してみる
山の中を歩くとき、現在の景色だけを見ていると分からないことがあります。
今は木が生えているけれど、昔は道だったかもしれない。
今は沢になっているけれど、昔は人工的に水を流していたかもしれない。
今は使われていない場所でも、昔は作業場だったかもしれない。
山というのは、長い年月の中で姿を変えています。
特に植林された山では、人が一度大きく手を入れています。
杉がきれいに並んでいる場所を見ると、
「この木を植えた人がいたんだな」
と改めて感じます。
当然、その人たちが山へ入るための道も必要だったでしょう。
水の管理も必要だったでしょう。
山の中の古い構造物は、その頃の痕跡なのかもしれません。
そう考えると、相続した山を歩くことが、少し面白くなります。
山林を活用するなら、水の流れを知ることが最初の一歩になります
相続した山林について、
キャンプに使いたい。
作業場を作りたい。
林道を整備したい。
車が入れるようにしたい。
何か活用したい。
そう考えている場合も、水の確認は重要です。
平らに見える場所だからといって、すぐ何かを置けばいいとは限りません。
大雨のときだけ水が通る場所かもしれません。
山側から水が集まる場所かもしれません。
昔そこに排水設備が造られていたなら、それなりの理由がある可能性があります。
私たちも山林を見るとき、土地そのものだけではなく、
「雨が降ったら水はどこへ行くんだろう」
という視点を持つようにしています。
晴れた日に想像しておくだけでも、土地の見方がかなり変わります。
全部を管理する必要はなくても、重要な場所だけは知っておく
山林は広いです。
何千平方メートル、何万平方メートルという土地を全部きれいに管理するのは現実的ではありません。
自然のままでいい場所は、そのままでいいと思います。
でも、
入口。
林道。
住宅との境。
道路沿い。
水路。
沢。
急斜面。
古い構造物。
こうした場所だけは位置と状態を把握しておく。
それだけでも大きく違います。
相続した山を管理するというのは、山全体を庭のように手入れすることではありません。
「重要な場所を知っていること」も管理の一つです。
写真を残しておくだけでも、将来役に立ちます
今回のような場所を見つけたら、写真を撮っておくことをおすすめします。
できれば周辺も何枚か撮ります。
正面。
横。
上流側。
下流側。
周辺の木や道。
スマートフォンで十分です。
数年後、同じ場所を見れば変化が分かります。
土が増えている。
木が倒れている。
構造物が傾いている。
水の流れが変わっている。
人間の記憶だけでは、
「前からこうだったかな?」
となってしまいます。
写真なら比較できます。
ドローンを使える場所なら、地上写真と上空写真を組み合わせるのも有効です。
こういう記録が、次の世代へ土地を引き継ぐときにも役に立ちます。
山の中に残っているものには、たいてい何か理由があります
今回の写真を見て、私はまず、
「これ、昔は何に使っていたんだろう」
と思いました。
山林を歩いていると、こういう疑問が本当によく出てきます。
全部の答えが分かるわけではありません。
何十年も前のものなら、もう知っている人がいないこともあります。
それでも、地形を見て、水の流れを見て、周りの木を見ていくと、少しずつ土地の姿が見えてきます。
相続した山林は、登記簿に書かれている面積だけがその土地の情報ではありません。
昔の道。
水の流れ。
木の状態。
構造物。
周辺との関係。
そこまで見て初めて、「どんな山なのか」が分かってきます。
相続した山林を「知らない山」のままにしない
山を相続したからといって、すぐ何かをする必要はありません。
売るのか。
残すのか。
活用するのか。
何も決まっていなくても構いません。
でも一度くらいは、自分の山を歩いてみる。
これはおすすめしたいと思っています。
思っていたよりきれいな杉林かもしれません。
昔の林道が残っているかもしれません。
きれいな沢があるかもしれません。
今回のような、正体の分からない古い構造物が出てくるかもしれません。
少し大変な場所もありますが、
「自分が相続したのは、こういう山だったのか」
と分かるだけでも大きな一歩です。
私たち栃木山林相続地管理センターでは、草刈りや伐採をするだけではなく、こうした土地そのものを知ることも山林管理の大切な部分だと考えています。
山は何十年、場合によっては何百年という時間の中で、人と自然の両方から影響を受けながら現在の姿になっています。
古い水路らしきものが一本残っているだけでも、
「ここには昔、人が山と関わっていた時間があったんだな」
と感じます。
そして、その土地を今度は私たちの世代が引き継いでいく。
そう考えると、ただの古いコンクリートも少し違って見えてきます。
まずは山へ入り、見る。
知る。
記録する。
そして必要なところだけ手を入れる。
相続した山林との付き合い方は、そこから始めても十分だと思います。
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栃木山林相続地管理センター
住所:栃木県日光市川室862-3
電話番号:050-6869-3646
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