台風が過ぎて安心したと思っていても、山林の中では倒木や幹折れ、かかり木などが発生していることがあります。相続した山林を放置している方に向けて、台風後に起こりやすい変化や現地確認の注意点を、栃木山林相続地管理センターが現場目線で紹介します。
台風が過ぎた翌日。
外を見ると雨も止んでいて、風もだいぶ落ち着いている。
「今回は大丈夫だったかな」
そう思うことがあります。
住宅であれば、屋根が飛んでいないか、庭の物が倒れていないか、ある程度すぐ確認できます。
ところが山林は少し違います。
道路から見ただけでは、山の中で何が起きているのか分かりません。
今回の写真は、台風のあとに山へ入ったときのものです。
写真を見ると、幹が途中で折れている木や、他の木にもたれかかるように倒れた木、地面まで落ちた木などが重なっています。
静かな写真ではありますが、実際その場で見ると、
「かなり荒れたな……」
と感じます。
昨日まで立っていた木が、次に来たときには横倒しになっている。
山を管理していると、自然の力の大きさをこういうところで実感します。
そして同時に思うのが、
台風が終わったことと、山の危険がなくなったことは同じではない
ということです。
山の外側が無事でも、中はまったく違うことがあります
山林を所有していても、普段から山の奥まで入っている方はそれほど多くないと思います。
相続した山であれば、なおさらです。
入口付近から見て木が立っている。
道路にも倒木はない。
それなら問題ないだろう。
そう思ってしまいがちです。
でも、50メートル、100メートルと奥へ入ると、まったく違う景色になっていることがあります。
今回の写真もそうです。
外から山を眺めていただけでは、この倒木はほとんど分かりません。
山林では木が密集しているため、奥の変化が非常に見えにくいのです。
特に台風のあとでは、
木が完全に倒れている。
途中から折れている。
根元が浮いている。
別の木にもたれかかって止まっている。
大きな枝だけ折れている。
こうした変化が山の中で起きている可能性があります。
つまり、
「道路から見て大丈夫だったから、山全体も大丈夫」ではありません。
台風で木が倒れる理由は、風だけではありません
倒木を見ると、
「ものすごい風だったんだろうな」
と考えます。
もちろん強風は大きな原因の一つです。
ただ、山林では風だけを見ていても十分ではありません。
台風では大量の雨も降ります。
雨が長時間降れば、土は水を含みます。
そこへ強い風が当たる。
すると、普段であれば耐えている木でも、根元を支える地盤が弱くなった状態で揺さぶられることになります。
また、木そのものが以前から傷んでいた可能性もあります。
幹の内部が腐っていた。
根が弱っていた。
過去の強風で一部が傷んでいた。
周囲の木が伐られ、以前より風を直接受けるようになっていた。
一本一本、条件は違います。
写真だけから倒れた原因を断定することはできませんが、山林では**「雨・風・地形・木の状態」が重なって倒木につながる**ことがあります。
だから台風後は、単純に「風が強かった地域だったかどうか」だけでは判断できません。
完全に倒れた木より怖いことがある、「かかり木」
山林へ入ったとき、特に気をつけたいものの一つが、他の木に引っかかった状態の木です。
いわゆる「かかり木」です。
今回の写真にも、斜めになった幹がほかの木に支えられているように見える部分があります。
こうした木は、一見すると止まっているので、
「もう倒れた後だから大丈夫」
と思ってしまいそうになります。
でも実際には、非常に不安定な場合があります。
支えていた枝が折れる。
風向きが変わる。
雨で地面の状態が変わる。
少しずつ位置がずれる。
それだけで、突然落ちることがあります。
見た目では、どこに力がかかっているのか分かりにくいところも怖いです。
チェーンソーを持っていけば簡単に切れる、というものでもありません。
むしろ、張力のかかった木を不用意に切れば、予想と違う方向へ跳ねたり動いたりする危険があります。
だから、台風後の山に入るときは、
倒れている木だけを見るのではなく、頭の上や斜めになった木にも注意する
必要があります。
木は根元から倒れるだけではありません
台風後の山を見ると、倒木にもいろいろな形があります。
根から倒れた木。
幹の途中で折れた木。
先端だけ折れた木。
大きな枝だけ落ちた木。
一本が倒れて、周囲の木を巻き込んだもの。
写真でも、折れた部分の木肌が新しく見える木があります。
こうした「幹折れ」は厄介です。
根元を見るだけでは分かりません。
木そのものは立っているように見えるのに、高い位置で折れた枝が引っかかっていることもあります。
山の中では上ばかり見ながら歩くわけにもいかないので、気付かず真下を通ってしまう可能性があります。
台風のあとに山へ入るなら、
足元。
周囲。
そして頭上。
普段以上に広く見ることが大切です。
倒木一本が林道を使えなくすることもあります
山林管理では、木そのものだけでなく、
どこへ倒れたのか
も重要です。
山の奥で倒れて、そのまま自然に朽ちていくなら、必ずしもすぐ処理しなければならないとは限りません。
自然の森林では倒木も環境の一部です。
ところが、
林道。
作業道。
山への入口。
道路沿い。
住宅の近く。
水路。
こうした場所では話が変わります。
木一本が林道を横断しただけで、車が入れなくなることがあります。
さらに、その奥でも倒木が発生していると、撤去しなければ山へ入ることさえできません。
相続した山林で、
「昔は車で奥まで入れたはずなんだけど」
という話を聞くことがあります。
何年も使わない間に草が伸びることもありますが、倒木によって道が失われていくこともあります。
一度通れなくなると、その先の状況確認ができなくなる。
確認できないから、さらに放置される。
そしてまた木が倒れる。
こうして山がだんだん遠い存在になってしまいます。
倒木が水をせき止めることもあります
これまでのブログで、大雨による濁流や山の中の古い水路についても紹介しました。
実は、倒木も水と深く関係しています。
山の中には、
沢。
小さな水路。
谷。
排水の通り道。
があります。
そこへ木が倒れる。
さらに枝や葉が引っかかる。
そこへ大雨が降る。
すると、土や落ち葉がさらにたまり、水の流れを妨げることがあります。
水は止まってくれるわけではありません。
本来流れる場所がふさがれれば、別の方向へ流れようとします。
斜面を削ったり、林道側へ流れたりする可能性もあります。
ですから台風後の山林では、
倒木と排水を別々に見るのではなく、セットで確認する
という視点も大切です。
特に谷側や沢沿いで大量に木が倒れている場合は、水の通り道も意識して見たいところです。
一本倒れることで、周囲の木にも影響することがあります
森林では木が一本ずつ独立して立っているように見えて、実際には周囲の環境と関係しています。
隣の木があることで風を直接受けにくくなっていることもあります。
一本の木が倒れれば、今まで内側にあった木が急に風を受けるようになることがあります。
倒れた木が別の木の枝を折ることもあります。
ツルでつながっている場合には、周囲を巻き込むこともあります。
つまり、台風直後に倒れなかった木でも、
「周囲の環境が変わったことで、次の強風に弱くなる」
可能性があります。
だから山を見るとき、
「倒れている木だけ処理して終わり」
ではなく、周囲の木の傾きや損傷も一度見ておくと安心です。
相続した山こそ、台風後の状態を一度知っておきたい
自分が日常的に使っている土地なら、
「あの木は前から傾いていた」
「この道は雨が降ると水が流れる」
といった感覚があります。
相続したばかりの山では、それがありません。
今回倒れたのか。
10年前から倒れていたのか。
以前から枯れていたのか。
最近傾いたのか。
比較する情報がないのです。
そこで役に立つのが写真です。
山へ入ったら、
入口。
林道。
大きな木。
沢。
斜面。
建物。
特徴のある場所。
を何枚か撮っておく。
次に台風が来たとき、同じ場所を撮れば変化を比較できます。
「この木は前回は立っていた」
「この部分が崩れた」
「沢に新しい倒木がある」
と分かります。
スマートフォンの写真でも十分です。
私たちも、山林の状態を記録として残すことには大きな意味があると考えています。
ドローンで確認できる場所と、人が入らなければ分からない場所
以前、ドローン空撮についても紹介しました。
台風後の確認でも、ドローンは役立つ場合があります。
広い山林を上空から見れば、
森林が大きく開いた場所。
林道上の大きな倒木。
崩れた場所。
などを見つけられることがあります。
一方で、今回の写真のような森林内部では、上空から木の下まで見ることはできません。
樹冠に隠れてしまうからです。
だから、
上空から全体を見る。
地上から必要な場所を確認する。
この両方を使い分けるのが現実的です。
山林管理では、何か一つの方法ですべてを見るのではなく、土地の状況に合わせることが重要です。
台風の直後に無理して山へ入らない
ここは特にお伝えしたいところです。
自分の山が心配になると、
「台風が通過したからすぐ確認しよう」
と思うかもしれません。
でも、直後の山林は普段より危険です。
倒木。
かかり木。
折れた枝。
ぬかるんだ地面。
増水した沢。
緩んだ斜面。
まだ強い風が残っていることもあります。
特に今回の写真のような状態では、倒木周辺へ不用意に近づくのは避けた方がいいです。
木は非常に重く、予想しない動きをすることがあります。
「写真を撮るだけ」
「少し確認するだけ」
のつもりでも、安全を優先する必要があります。
山は逃げません。
天候と地盤が落ち着いてから見るくらいでいいと思います。
倒木を全部片付けなければいけないわけではありません
写真を見ると、
「これは全部撤去しないといけないの?」
と思う方もいるかもしれません。
山林全体の倒木をすべて撤去する必要はありません。
自然のままで問題のない場所もあります。
むしろ、すべての木を片付けようとすれば、とても大きな費用と手間がかかります。
私たちが大切だと思うのは、優先順位です。
人や車が通る場所。
道路へ落ちる可能性がある木。
住宅へ影響する木。
電線などの周辺。
水路をふさいでいる木。
次の作業を妨げる木。
こうしたものを優先する。
山の奥で安全上問題のない倒木なら、自然に戻していくという考え方もあります。
山林管理は、
山を全部きれいにすることではありません。
必要な場所を見極め、必要なところだけ管理する。
それが現実的だと思っています。
台風は、普段見えない山の弱点を教えてくれます
台風による倒木は、できれば起こってほしくないものです。
でも、台風後に山を見ると、その土地の特徴がよく分かることがあります。
どこに風が当たりやすいのか。
どこに水が集まるのか。
どの木が弱っているのか。
林道のどこがふさがりやすいのか。
どの斜面に注意した方がいいのか。
普段の晴れた日には気付かなかった部分が、台風をきっかけに見えてきます。
それを次の管理に生かすことができます。
山は静かでも、常に少しずつ変わっています
今回の写真を見ながら改めて思ったのですが、山林というのは一見すると何も変わっていないように見えます。
去年も木がある。
今年も木がある。
来年もおそらく木がある。
でも実際には、
木が育つ。
木が枯れる。
枝が折れる。
木が倒れる。
新しい木が育つ。
水の流れが変わる。
少しずつ姿を変えています。
そして台風や大雨が来ると、その変化が一気に進むことがあります。
相続した山林を毎週管理する必要はありません。
全部を整備する必要もありません。
でも、大きな台風や豪雨のあとなど、節目で一度状態を確認する。
それだけでも、山との付き合い方はかなり変わると思います。
栃木山林相続地管理センターでは、山林を単純に「草を刈る土地」「木を切る土地」としてではなく、
その土地が今どうなっていて、どこに手を入れる必要があるのかを考えること
を大切にしています。
今回のような倒木を見ると、自然の力には改めて驚かされます。
人間の力で台風を止めることはできません。
でも、
被害を確認する。
記録する。
危険な場所を把握する。
必要なところだけ手を入れる。
そして次の台風に備える。
これはできます。
台風が過ぎて空が晴れたあとこそ、山ではまだ注意が必要です。
相続した山林を長く見ていない方も、大きな台風のあとには、一度「山の中はどうなっているだろう」という視点を持ってみてください。
道路からは何も変わっていないように見えても、その奥では今回の写真のように、山の景色が大きく変わっているかもしれません。
タグ:
山林相続 / 山林管理 / 台風 / 倒木 / かかり木 / 相続した山林 / 森林管理 / 山林の危険 / 災害対策 / 栃木県 / 栃木山林相続地管理センター
栃木山林相続地管理センター
住所:栃木県日光市川室862-3
電話番号:050-6869-3646
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